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ゲノム抗体創薬の開発拠点

医薬品産業の開発競争
ゲノム抗体創薬の3つの波と我々の抗体創薬
青:ゲノム抗体創薬の3つの波
赤:我々の抗体創薬
 バイオ医薬品の中で、抗体医薬品は21世紀にはいって、急成長し、バイオ産業の牽引車となっている。その成長スピードは著しく、世界での抗体医薬品は現在、4兆円規模にまでなっている。今後、10兆円への成長が予測され、医薬品産業の開発競争の天王山といわれる(ゲノム抗体創薬の3つの波と我々の抗体創薬)。

 今日、抗体医薬品の治験が、250件行われているが、抗原数(標的数)でみると、30種であり、成功しているのは、第一世代9抗原、第二世代1抗原しかない。抗体機能のイノベーション技術が必須である(抗体の製品化は頭打ち)。



抗体の製品化は頭打ち 産官学連携で特許化した抗体


特許数、実用化、研究への寄与でも大きなリード
新機能抗体創製技術開発の実施状況
 中心研究者である東京大学の児玉と中外製薬の山崎は、「ゲノム抗体創薬」の発案者である。1999年からアフィメトリクス社のマクロアレーを用いて、がん治療標的の探索をはじめ、東大病院などでがんサンプルをバンキングし、01年からのNEDOプロジェクトで、がん細胞膜の標的タンパク質へ系統的にモノクローナル抗体の作成を始めた。我が国のゲノム創薬プロジェクトが上流の標的探索で苦労する中で、先端研は標的からスタートしたという戦略的優位が大きく、早くも2002年には最初の肝臓がん治療抗体グリピカン3抗体が樹立された(産官学連携で特許化した抗体)。これは中外製薬に技術移転され、現在海外で治験が進行中で、画期的な治療薬となる事が期待されている。
 抗原体作製チーム・リーダーの浜窪は、膜タンパクの研究途上で、発芽型のバキュロウィルス表面に発現困難な膜タンパクを発現する技術を開発し(浜窪特許2002)、これを用いて、高率に、膜タンパクへの親和性の高い抗体を作る技法を確立した(新機能抗体創製技術開発の実施状況)。
 現在の集中拠点は、東大先端研にあり、バキュロウィルス作成(5名)、細胞融合(4名)、抗体評価(ELISA3名、FACS、western6名)、質量分析(3名)、膜タンパク質機能解析(3名)の24名の研究グループが、一体となって、抗原と抗体を精密に作り、品質管理をしている。NEDOプロジェクトの経費で、年100種類の抗原系統的にモノクローナル抗体を作る拠点を運営している。
 産官学連携で世界最大級の疾患関連500抗原にモノクローナル抗体が作成されている。7種のがんの、12種の治療抗体が産官学連携で特許化され世界トップレベルの成果を誇っている(産官学連携で特許化した抗体)。
 同じ時期にスタートした欧州を中心としたHUPO抗体プロジェクトがペプチドをウサギに免疫してポリクロ抗体を作成したのと比較して、特許数、実用化、研究への寄与でも大きなリードを作っている。
 こうしたリード抗体の中で、ROBO1抗体では、中外と富士フイルムの協力のもと、プレターゲッティング製剤により、世界でもトップレベルの集積率を示すPETイメージングに成功した。また、グリピカン3抗体は中外製薬により海外での治験がスタートし肝臓がん治療を変えようとしている。
 抗体医薬品開発の上では、遺伝子のマイニングで当初、有望に思われた標的抗原が、実際には、発現が困難であったり、抗体の作成が困難であったり、途中で停滞しているものも少なくない。つまり、一つの標的でがん治療薬を作ろうとするのでなく、パイプラインとして標的探索から医薬品化を継続的に行う事が成功の鍵である。