MDAAD

NEWS

2010-08-05

東京大学 先端科学技術研究センターのがんの再発・転移治療薬の開発用スーパーコンピュータシステムが稼働


世界初!分子動力学により抗体医薬品の基本構造の設計を実現


このほど、東京大学 先端科学技術研究センター(所在:東京都目黒区、所長:中野 義昭、以下、先端研)と富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)は共同で、がんの再発・転移治療薬の開発に活用するスーパーコンピュータシステムを構築し、2010年8月1日より稼働を開始しました。 本システムは、富士通のブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」によるPCクラスタ型のスーパーコンピュータです。300ノードで構成し、理論ピーク性能は38.3テラフロップス(注1)で、先端研におけるがんの再発・転移を治療する「ゲノム抗体医薬品」設計のためのコンピュータシミュレーションに活用されます。

【 「がんの再発・転移を治療する多機能な分子設計抗体の実用化」研究プロジェクトについて 】

先端研 児玉教授が中心となって推進する、最先端研究開発支援プログラム「がんの再発・転移を治療する多機能な分子設計抗体の実用化」のための研究開発では、ゲノム解読成果を基にしたがんの「ゲノム抗体医薬品」を、コンピュータシミュレーションを駆使することで世界に先駆けて設計し、臨床試験・治療を開始することを目指しています。

抗原と抗体のシミュレーション [ 抗原(オレンジ)と抗体(水色)のシミュレーション ]

抗体医薬品の研究開発世代には、1990年代からの動物実験により作った抗体医薬品をヒト型化し人間に適用できる抗体をつくる第一世代、2000年代からのがんに直接作用して放射線などによって治療できる抗体をつくる第二世代があります。このたびの研究開発は、スーパーコンピュータによるシミュレーションを活用して抗体医薬品の基本構造の設計を行い、将来、日本で発生率の高いがん(肺、大腸、胃、肝臓、膵臓、前立腺、乳腺)や、再発・転移した進行性がんに対しても副作用の少ない画期的な第三世代の抗体医薬品による治療ができることを目的としています。

この研究は、世界で初めて、がん細胞の一部である抗原(タンパク質)と抗体(タンパク質)との相互作用を分子動力学によりシミュレーションし、人工抗体の設計を行います。この手法は、IT創薬で一般的な、これまでのコンピュータを活用した低分子とタンパク質との相互作用のシミュレーションと比較して、約10倍と膨大な量の計算が必要となるため、短期間でシミュレーションを行えるスーパーコンピュータを導入しました。

本システムの活用により、従来の実験による研究開発プロセスでは3?4年間かかっても実現が難しいとされていた人工抗体の設計を、わずか数ヶ月で行えることを目的としています。また将来は、この成果を元に、次世代スーパーコンピュータ(京速コンピュータ「京」)(注2)を活用して、さらに多くの抗体医薬品の開発を行うことを目指しています。

【 スーパーコンピュータシステムの概要 】

スーパーコンピュータ [ スーパーコンピュータ ]

本スーパーコンピュータシステムは、最新のブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」を計算ノードとした、300ノードからなるPCクラスタシステムです。最新のインテルXeonプロセッサー X5650をノードあたり2CPU、合計600CPU搭載し、理論ピーク性能は38.3テラフロップスです。ノード間の通信を行うインターコネクトには、4GB/sの転送性能を持つネットワークインタフェースであるInfiniBand QDRを採用しており、高性能な並列演算を実現しています。 またストレージとして、ディスクアレイ装置「ETERNUS DX80」5台を備え、RAID6時の実効容量は1ペタバイトです。

【 関連Webサイト 】
  • http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/rcast/director/index.html(東京大学先端科学技術研究センター 紹介サイト)
  • http://www.mdadd.org/ (分子設計抗体プロジェクト 紹介サイト)
  • http://jp.fujitsu.com/solutions/hpc (富士通のHPC 紹介サイト)
【 商標について 】
  • インテル、Xeonは、米国およびその他の国における米国Intel Corporationの商標または登録商標です。
  • InfiniBandは、InfiniBand Trade Associationの商標またはService Markです。
  • その他、記載されている商品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
【 注釈 】
(注1) テラフロップス(TFLOPS)
1テラフロップスは毎秒1兆回の浮動小数点演算速度。
(注2) 次世代スーパーコンピュータ
文部科学省「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築」計画のもと、富士通が理化学研究所と共同開発しているスカラ並列型スーパーコンピュータ。
《報道機関お問い合わせ先》
東京大学 先端科学技術研究センター
経営戦略企画室広報担当 神野 電話:03-5452-5424(直通) E-mail: communication@rcast.u-tokyo.ac.jp
富士通株式会社
広報IR室 足立 電話:03-6252-2174(直通)
《お客様お問い合わせ先》
富士通株式会社
TCソリューション事業本部 TC統括営業部 電話:03-6252-2554(直通)
[HPCビジネス全般について]
富士通株式会社 TCソリューション事業本部 TC戦略室 電話:03-6252-2483(直通) E-mail: contact-hpc@cs.jp.fujitsu.com